犬の病気一覧は「緊急度・症状・部位」の順で確認しよう
犬の病気には、皮膚・耳・目・歯、呼吸器、心臓、消化器、肝臓・胆のう・膵臓、腎臓・尿路、ホルモン、骨・関節、脳・神経、生殖器、感染症・寄生虫、腫瘍などがあります。ただし、同じ「咳」でも気管や肺だけでなく心臓の病気が関係することがあり、嘔吐・元気消失・多飲多尿のような変化も複数の病気で共通します。症状と病名を一対一で結びつけることはできません。
この記事の一覧は、家庭で病名を当てるためではなく、次の3点を整理するためのものです。
- 今すぐ受診先へ連絡すべき状態か
- どの変化を動物病院へ伝えるか
- 年齢・体格・生活環境に合わせて何を予防し、健診で確認するか
日本の犬でどの診療領域が多いかを見る参考として、アニコム『家庭どうぶつ白書2025』があります。0〜12歳の保険加入犬741,919頭を年齢調整した請求割合では、消化器25.6%、皮膚24.8%、耳15.4%などが目立ちました。0歳では消化器の請求割合が42.9%で、12歳では循環器16.1%、肝・胆・膵15.4%、泌尿器11.7%、腫瘍13.9%と、年齢によって構成が変わります。
ここでいう数値は、1年間にその分類で保険金支払いがあった契約犬の割合です。日本のすべての犬の発症率ではなく、保険へ加入していない犬は含まれません。1頭が複数の分類で請求されることもあるため、割合を足して100%にするデータでもありません。「うちの犬もこの確率で病気になる」「上位以外は心配ない」と読むのではなく、幅広い年齢で皮膚・耳・消化器の相談があり、加齢とともに確認したい領域が増えるという傾向として使います。
病名の完全な一覧は非常に長く、まれな疾患、先天性疾患、犬種に関連する疾患、新たに分類される病気まで含めると一記事では網羅できません。本記事では、飼い主が日常で変化に気づきやすい代表例を体の系統別にまとめます。診断と治療は、病歴、身体検査、血液・尿・便検査、画像検査などを組み合わせて獣医師が行います。
今すぐ動物病院へ連絡したい犬の危険なサイン
病名一覧を読む前に、愛犬の全身状態を確認してください。Merck Veterinary Manualの犬猫の救急解説(2025年12月更新)は、呼吸困難、持続するけいれん、意識消失、重度の出血、尿の流れが塞がった状態、中毒、熱中症、大きな外傷などを、直ちに治療が必要になり得る問題として挙げています。
次のどれかがある場合は、検索や記録を続けるより先に、診療時間内・時間外を問わず受診できる動物病院へ電話してください。
- 息が苦しそう:胸やお腹を大きく使う、横になれない、舌や歯ぐきの色が白い・青紫色、反応が鈍い
- 意識・神経の異常:倒れる、呼びかけに反応しにくい、立てない、けいれんが続く・短時間に繰り返す、急に麻痺する
- お腹の急変:腹部が急に膨らむ、吐こうとしているのに何も出ない、強く痛がる、嘔吐を繰り返して水も保てない
- 排尿できない:何度も姿勢を取るのに尿が出ない、数滴しか出ず苦しそう、元気消失や嘔吐を伴う
- 出血・外傷:圧迫しても止まらない出血、交通事故、高所からの落下、胸や腹への強い外傷、骨が見える傷
- 中毒・誤食の疑い:人の薬、殺虫剤、洗剤、保冷剤、有害な食品や植物、電池、ひも、鋭い物などを口にした可能性がある
- 熱中症の疑い:暑い環境の後に激しいパンティング、ふらつき、嘔吐・下痢、意識や反応の低下がある
- 妊娠・出産の異常、急速な悪化、飼い主が「いつもと明らかに違う」と感じる状態
Merckの緊急時の案内は、救急対応は動物病院への電話から始まると説明しています。受け入れ可能か、移動中に何をするか、何をしないかを確認しましょう。痛みや恐怖がある犬は普段おとなしくても噛むことがあります。無理に口を開ける、吐かせる、喉の奥へ手を入れる、歩かせるといった行動は、電話で指示されていない限り行いません。
緊急サインがなくても、食べない、吐く・下痢が続く、咳が増える、痛がる、歩き方がおかしい、体重が減る、多飲多尿、皮膚や耳の異常が繰り返す場合は、当日中〜早めにかかりつけへ相談します。子犬、シニア犬、妊娠中、持病がある犬、手術・投薬変更の直後は、同じ症状でも早めの確認が必要になることがあります。
症状から考える主な病気の領域
症状は病名ではありません。一つの変化から候補を絞り込みすぎず、始まった時期、回数、持続時間、食事・飲水・排尿・排便、元気、呼吸、痛み、誤食、薬、持病をまとめて伝えると、診察の手掛かりになります。
| 気づいた変化 | 関係し得る主な領域・例 | 相談時に伝えたいこと |
|---|---|---|
| かゆい、赤い、脱毛、湿疹、におう | アレルギー性皮膚炎、細菌・酵母・寄生虫による皮膚炎、ホルモン疾患、免疫疾患 | 部位、左右差、季節、食事・シャンプー・予防薬の変更、同居動物や人の皮膚症状 |
| 頭を振る、耳をかく、耳垢・におい、傾く | 外耳炎、中耳炎、耳ダニ、異物、アレルギー、前庭疾患 | 片耳か両耳か、痛み、耳掃除歴、ふらつき・嘔吐の有無 |
| 目が赤い、しょぼしょぼする、濁る、見えにくそう | 結膜・角膜の病気、ドライアイ、白内障、緑内障、ぶどう膜炎、外傷 | 急に始まったか、片目か両目か、目をこするか、外傷・薬品の可能性 |
| 口臭、よだれ、食べ物を落とす、片側で噛む | 歯周病、歯の破折、口内炎、異物、口腔内腫瘤 | 食べる速さ、硬い物を避けるか、出血、顔の腫れ、口を触らず撮れた写真 |
| 咳、呼吸音、鼻水、運動を嫌がる | 気管・気管支・肺の病気、感染症、短頭種気道の問題、心臓病 | 安静時か運動時か、夜間・興奮時との関係、舌や歯ぐきの色、失神の有無 |
| 嘔吐、下痢、便秘、血便、腹痛、腹部膨満 | 胃腸炎、寄生虫、膵炎、異物・閉塞、食事関連、肝胆膵疾患、腫瘍など | 回数、吐いた物・便の写真、食事変更、誤食、飲水、体重、薬 |
| 水を多く飲む、尿量・回数が変わる、血尿 | 腎臓・尿路疾患、糖尿病、クッシング症候群、子宮蓄膿症、薬の影響など | 可能なら24時間の飲水量、尿の回数・色、排尿時の痛み、未避妊か、投薬 |
| 太る・痩せる、被毛が変わる、元気が落ちる | 栄養・消化吸収、甲状腺・副腎・糖尿病、腎臓・肝臓、腫瘍、慢性炎症など | 同じ体重計での推移、食事量、筋肉の変化、活動量、飲水・尿量 |
| 足をかばう、立ちにくい、階段や散歩を嫌がる | 外傷、膝蓋骨脱臼、前十字靱帯損傷、股関節形成不全、変形性関節症、脊椎・神経疾患 | いつ・どの動作で起こるか、動画、痛がる部位、滑りやすい床、外傷歴 |
| 震え、けいれん、ふらつき、旋回、麻痺、行動変化 | 脳・脊髄・末梢神経、前庭、代謝異常、中毒、低血糖、肝腎疾患など | 発作の動画と時間、意識の有無、前後の行動、誤食、薬、頭部外傷 |
| しこり、治りにくい傷、出血、リンパ節の腫れ | 炎症、膿瘍、良性腫瘤、悪性腫瘍など | 気づいた日、位置、大きさの変化、色、出血・痛み、写真 |
Merckの犬の消化器疾患解説(2026年5月更新)が示すように、嘔吐・下痢・食欲低下・腹部膨満などは、症状の組み合わせと診察・検査で原因を探します。また、犬の呼吸器疾患解説は、咳や努力性呼吸が呼吸器だけでなく、うっ血性心不全など他の系統の病気でも起こり得ると説明しています。「当てはまる病名が多い」ことは珍しくなく、それ自体が重病を意味するわけでも、安心材料になるわけでもありません。
部位・体の仕組み別に見る犬の代表的な病気一覧
以下は家庭犬で知っておきたい代表例です。まれな病気を含む完全な辞典ではなく、似た症状を起こす病気をグループで把握するための一覧です。病名の横にある変化は「よく見られることがある」もので、すべての犬に出るわけではありません。
| 分類 | 代表的な病気・状態 | 家庭で気づきやすい変化 |
|---|---|---|
| 皮膚 | アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、膿皮症、マラセチア皮膚炎、ノミ・ダニによる皮膚炎、自己免疫性皮膚疾患 | かゆみ、赤み、足をなめる、顔をこする、脱毛、フケ、べたつき、繰り返す皮膚・耳の炎症 |
| 耳 | 外耳炎、中耳炎、内耳炎、耳ダニ、耳血腫、異物 | 頭を振る、耳をかく、悪臭、赤み、分泌物、触ると痛がる、首を傾ける |
| 目 | 結膜炎、角膜炎・角膜潰瘍、ドライアイ、白内障、緑内障、ぶどう膜炎、網膜疾患、水晶体脱臼 | 目やに、充血、涙、まぶしそう、目を閉じる、濁り、物にぶつかる。急な痛み・外傷・視力低下は早急に相談 |
| 歯・口 | 歯肉炎・歯周炎、歯の破折、歯根の感染、口内炎、不正咬合、口腔内腫瘤 | 口臭、歯肉の赤み・出血、よだれ、食べ物を落とす、硬い物を避ける、顔の腫れ |
| 鼻・気管・肺 | 鼻炎、異物、ケンネルコフ、気管虚脱、短頭種気道症候群、気管支炎、肺炎、喉頭麻痺、肺水腫・胸水 | 鼻水・鼻血、くしゃみ、咳、ガーガーという音、運動不耐、速い・浅い・苦しそうな呼吸 |
| 心臓・血管 | 僧帽弁を中心とする変性性弁膜症、先天性心疾患、拡張型心筋症、不整脈、肺高血圧症、心不全 | 咳、疲れやすい、散歩を嫌がる、呼吸数の増加、失神、腹部膨満。初期は目立つ症状がないこともある |
| 胃・腸 | 急性・慢性胃腸炎、食事反応性腸症、寄生虫、異物・腸閉塞、胃潰瘍、胃拡張・胃捻転、便秘、消化管腫瘍 | 嘔吐、下痢、便秘、食欲低下、血便・黒い便、腹痛、体重減少、腹部膨満 |
| 肝臓・胆のう・膵臓 | 肝炎、門脈体循環シャント、胆のう粘液嚢腫、胆管・胆のうの炎症、急性・慢性膵炎、膵外分泌不全 | 嘔吐、下痢、食欲低下、腹痛、元気消失、体重減少、黄疸、多飲多尿。症状だけでは胃腸疾患と区別しにくい |
| 腎臓・尿路 | 急性腎障害、慢性腎臓病、膀胱炎、細菌性尿路感染、腎盂腎炎、尿路結石、尿路閉塞、尿路腫瘍 | 水・尿が増える、尿量が減る、何度も排尿姿勢を取る、血尿、失禁、痛み、嘔吐、食欲低下 |
| ホルモン・代謝 | 糖尿病、クッシング症候群、副腎皮質機能低下症(アジソン病)、甲状腺機能低下症、低血糖など | 多飲多尿、食欲や体重の変化、皮膚・被毛の変化、腹部膨満、元気消失、嘔吐・下痢、震え。検査で区別する |
| 骨・関節・筋肉 | 膝蓋骨脱臼、股関節形成不全、前十字靱帯損傷、変形性関節症、骨折、発育期の骨疾患、筋炎 | 跛行、足を上げる、立ち上がりにくい、階段・ジャンプを避ける、触ると痛がる、筋肉が落ちる |
| 脳・脊髄・神経 | てんかん、前庭疾患、椎間板疾患、脳炎、変性性脊髄症、脳・脊髄腫瘍、先天性・遺伝性疾患 | けいれん、震え、ふらつき、首の傾き、旋回、痛み、麻痺、排尿障害、行動・反応の変化 |
| 血液・免疫 | 貧血、免疫介在性溶血性貧血、免疫介在性血小板減少症、凝固異常、自己免疫疾患 | 歯ぐきが白い、疲れやすい、息が速い、皮下出血、鼻血・血尿、止まりにくい出血、黄疸 |
| 生殖器 | 子宮蓄膿症、乳腺・精巣・前立腺の病気、膣炎、停留精巣、妊娠・分娩の異常 | 未避妊犬の元気・食欲低下、多飲多尿、陰部からの分泌物、腹部膨満、排尿・排便しづらい、しこり |
| 感染症・寄生虫 | 犬ジステンパー、犬パルボウイルス感染症、犬伝染性肝炎、レプトスピラ症、狂犬病、犬糸状虫症、消化管寄生虫、ノミ・マダニ媒介性疾患 | 発熱、元気・食欲低下、咳・鼻汁、嘔吐・下痢、黄疸、神経症状など。年齢、ワクチン歴、地域、外出・預かり・旅行でリスクが変わる |
| 腫瘍 | 肥満細胞腫、リンパ腫、乳腺腫瘍、血管肉腫、骨肉腫、口腔・皮膚・内臓の腫瘍など | しこり、治りにくい傷、出血、体重減少、食欲低下、腹部膨満、跛行。ただし見た目や硬さだけで良性・悪性は判断できない |
一覧にある病名が症状と一致しても、その病気とは限りません。たとえば、多飲多尿は腎臓病、糖尿病、クッシング症候群、子宮蓄膿症、薬の影響などで見られます。かゆみもアレルギーだけでなく、ノミ・ダニ、細菌・酵母、接触刺激、ホルモンや免疫の病気が関係することがあります。検査前にフードや薬を次々に変えると経過を読みにくくなるため、まず現在の食事・薬・予防歴を病院へ伝えます。
しこりも同じです。Merckの犬の皮膚腫瘍解説は、良性と悪性を区別するには獣医師による細胞診や生検などが必要だと説明しています。元気がある、小さい、柔らかい、何年もあるという情報だけで安全とは判断できません。位置が分かる全体写真と、定規を皮膚へ強く押しつけず大きさの目安が分かる写真を残し、舐める・出血する・急に大きくなる場合は早めに相談してください。
子犬・成犬・シニア犬、体格や犬種で注意点は変わる
犬は体格と犬種によって成長・老化の速さが異なります。2019 AAHA Canine Life Stage Guidelinesは、年齢だけでなく、体格、犬種、生活様式、健康状態を組み合わせて予防計画を立てる考え方を示しています。「7歳になったら全犬が同じ検査」「この犬種ならこの病気」と一律には決めません。
子犬で注意したいこと
子犬は免疫や体温・血糖の調節が未熟で、感染症、寄生虫、低血糖、誤食、先天性疾患、発育期の骨・関節の問題などを確認します。嘔吐・下痢、食べない、ぐったり、震えがあると、成犬より短時間で弱る場合があります。ワクチンが完了する前の外出や犬同士の接触は、社会化の必要性と感染リスクを獣医師と相談して計画します。
成長期の食事は、予想成犬体重に合う総合栄養食を基本にします。特に大型犬の子犬では、自己判断でカルシウムなどのサプリを足すと栄養バランスを崩す可能性があります。体重増加、便、歩き方、乳歯と永久歯の生え替わり、停留精巣などを健診で確認しましょう。
若齢〜成熟した成犬で注意したいこと
成犬では、皮膚・耳、歯周病、胃腸、肥満、外傷、尿路、アレルギーなど、生活と関連する相談が増えます。元気に見える時期ほど、年1回前後の診察で体重、筋肉、口腔、皮膚・耳、心音、関節、予防歴の基準を作っておくと、後の変化を比べやすくなります。
ドッグラン、ホテル、トリミング、多頭飼育、野外活動、旅行、川や山へ行く機会によって感染症・寄生虫リスクは変わります。食事やおやつ、運動、予防薬は「同じ年齢の犬」ではなく、その犬の体格、生活範囲、持病、現在の薬に合わせます。
シニア犬で注意したいこと
シニア期は「最後の25%の推定寿命」が一つの考え方で、小型犬と大型犬では開始時期が異なります。心臓、腎臓・尿路、肝胆膵、内分泌、腫瘍、歯科、変形性関節症、認知機能などを幅広く見ます。白書の保険請求データでも、循環器、肝胆膵、泌尿器、内分泌、腫瘍の請求割合は年齢とともに上がる傾向でした。
「年だから寝ている」「頑固になった」「階段が苦手になった」と決めつけず、痛み、視聴覚、心肺機能、ホルモン、神経、認知機能を含めて相談します。体重が同じでも筋肉が減り脂肪が増えることがあるため、体重だけでなく背中・腰・太ももの筋肉、立ち上がり、歩幅、爪の減り方も見ます。
小型・大型・短頭種などの違い
小型犬では変性性弁膜症や歯科疾患、膝蓋骨脱臼など、大型・超大型犬では股関節や前十字靱帯、拡張型心筋症、胃拡張・胃捻転などが相談項目になることがあります。胸が深い体形、脚が短い体形、鼻が短い体形、皮膚のひだ、耳の形なども、注意する部位に影響します。
ただし、犬種は診断ではありません。好発とされる病気があっても発症しない犬は多く、ミックス犬や該当しない犬にも同じ病気は起こります。遺伝子検査で分かるのも特定の変異やリスクであり、現在の健康状態やすべての病気を判定するものではありません。犬種情報は健診項目を相談する材料として使い、症状があるときは犬種だけで原因を決めないでください。
犬の病気に早く気づくために毎日見る6項目
病気を早く見つけるとは、家庭で診断することではなく、普段との差を小さいうちに捉えて相談へつなげることです。同じ時刻・同じ方法で短く記録すると、食事量や排泄の変化を比較しやすくなります。

1. 食事
食べた量だけでなく、食器へ行くか、においを嗅いでやめるか、口から落とすか、噛み方が変わったか、食後に吐くかを見ます。多頭飼育では誰が食べたか分かるよう、必要に応じて食事場所を分けます。急に食欲が増えた場合も、多飲多尿や体重変化と合わせて記録します。
2. 水と尿
水皿・給水器の減り方、補充量、排尿回数、量の目安、色、におい、痛がる様子、失敗を確認します。急に水を飲む量が増えたと感じたら、可能な範囲で24時間の補充量を測ります。暑さ、運動、ウェットフード、複数頭で同じ器を使う状況は数値に影響するため一緒に記録します。
3. 便と嘔吐
回数、量、色、硬さ、血・粘液・異物の有無、始まった日を残します。吐き戻しと嘔吐の違いを家庭で決めきれなくても、食後何分か、腹部が波打つ動きがあったか、吐いた物の写真があると説明しやすくなります。ひもや異物が口や肛門から見えても引っ張りません。
4. 呼吸と咳
寝ているときや安静時の胸の動き、咳の音と回数、興奮・運動・食事・夜間との関係を見ます。呼吸数を記録するよう主治医から指示されている犬は、その方法と基準を優先してください。呼吸が苦しそう、舌や歯ぐきの色が普段と違う、失神がある場合は、動画撮影や計測のために連絡を遅らせません。
5. 動きと行動
立ち上がり、歩幅、左右差、階段・ジャンプ、散歩の距離、寝る場所、夜鳴き、徘徊、呼びかけへの反応を見ます。滑る床、長い爪、暑さ、恐怖など環境要因も記録します。痛そうな脚や背中を揉む、無理に曲げ伸ばす、自己流で運動量を増やすことは避けます。
6. 皮膚・耳・目・口・体重
かゆみ、赤み、耳のにおい、目やに、口臭、よだれ、被毛、しこり、体重・体形を確認します。見える範囲を静かに観察し、嫌がる口や耳を無理に開けません。体重は同じ体重計・近い時間帯で測ると比較しやすく、しこりは位置と大きさを写真に残します。
病院へは、①始まった日時、②回数・持続時間、③食事と水、④尿・便・嘔吐、⑤呼吸と動き、⑥体重、⑦新しいフード・おやつ・薬・サプリ、⑧誤食・外出・接触の可能性、⑨持病・手術歴・現在の薬を伝えます。動画や写真は補助になりますが、撮れなくても受診できます。

犬の病気を防ぐ・早く見つけるためにできること
すべての病気を予防する方法はありません。感染症や寄生虫の一部はワクチン・予防薬・環境管理でリスクを下げられますが、心臓病、内分泌疾患、腫瘍、遺伝性疾患などは、症状が出る前の健診や早期の管理が中心になる場合があります。「予防できる病気」と「早く見つけて管理する病気」を分けて考えます。
健診の間隔を年齢と持病に合わせる
AAHAの犬ライフステージチェックリストでは、健康な若齢〜成熟犬は6〜12か月ごと、シニア犬は少なくとも6か月ごとの診察を一般的な目安としています。子犬は成長とワクチン計画に合わせて、より短い間隔で通院します。
これは一律の義務ではありません。持病、過去の検査結果、服薬、犬種・体格、生活環境、受診時のストレスに応じて間隔と検査を決めます。健診では身体検査に加え、年齢とリスクに応じて血液、尿、便、血圧、画像検査などを相談します。検査名の多さではなく、「何を確認する検査か」「結果で次の行動がどう変わるか」を聞きましょう。
ワクチンと寄生虫対策を個別化する
WSAVAの2024年犬猫ワクチンガイドラインは、すべての犬猫をコアワクチンで守ることを基本とし、ノンコアワクチンは生活様式と地域の流行状況を踏まえて選ぶ考え方を示しています。必要な種類と時期は、年齢、接種歴、健康状態、同居動物、ホテル・ドッグラン・旅行、地域によって変わります。
日本では、厚生労働省の2026年版案内にあるとおり、犬の登録、年1回の狂犬病予防注射、鑑札と注射済票の装着が法律で義務づけられています。体調上の事情や手続きは、かかりつけの獣医師と居住自治体へ確認してください。狂犬病予防注射と混合ワクチンは目的も制度も異なり、片方がもう片方の代わりになるものではありません。
ノミ、マダニ、犬糸状虫、消化管寄生虫の対策も、地域、季節、外出、野生動物や蚊・ダニへの曝露で変わります。Merckの犬の消化管寄生虫解説(2026年5月更新)は、人にも感染し得る寄生虫があることを説明しています。市販薬や犬猫用製品を重ねて使わず、体重と健康状態に合う製品・間隔を動物病院で確認します。
口腔、体重、食事、運動、住環境を整える
Merckの犬の歯科疾患解説(2025年10月更新)は、家庭の歯みがきと定期的な歯科評価が歯肉・歯周組織の健康維持に役立つとしています。口を触る練習は痛みのない時期に少しずつ行い、出血、顔の腫れ、強い口臭、食べ方の変化があるときは、無理に磨かず先に診察を受けます。
食事は年齢と体格に合う総合栄養食を基本に、体重とボディコンディションを見て量を調整します。健康な犬の主食選びは国産ドッグフードの選び方も参考になりますが、腎臓、肝臓、心臓、膵臓、尿路、アレルギーなどの病気がある犬では、一般のおすすめ記事より主治医の栄養指示を優先してください。療法食やサプリを自己判断で開始・中止しません。
運動は年齢、心肺機能、関節、暑さに合わせます。急に運動量を増やさず、滑りやすい床にはマットを敷き、爪と足裏の毛を整え、段差への補助を検討します。誤食しやすい薬、電池、ひも、串、洗剤、殺虫剤、人の食品は犬の届かない場所へ保管します。留守番中も含め、室温・湿度と飲水を確保します。
よくある質問
症状検索だけで犬の病名を判断できますか?
できません。同じ症状が複数の病気で現れ、見た目が似ていても緊急度が違うことがあります。症状検索は「病院へ何を伝えるか」を整理するために使い、病名を決めるためには使わないでください。呼吸困難、意識低下、けいれんの持続、排尿不能、中毒・熱中症・大きな外傷などがあれば、候補を比較せずすぐ病院へ連絡します。
元気がある犬のしこりは様子見でよいですか?
元気があることだけでは、しこりが良性か悪性か判断できません。大きさ、場所、増え方、出血・痛みの有無を記録し、早めに診察を受けてください。急に大きくなる、赤い、ただれる、出血する、舐め続ける、全身状態が変わる場合は相談を急ぎます。しこりを強く揉む、つぶす、針を刺すことは避けます。
犬は何歳から健康診断を増やすべきですか?
一律の年齢では決められません。シニア期の始まりは予想寿命の最後の25%という考え方があり、一般に大型犬は小型犬より早くシニア期へ入ります。AAHAの一般目安では成犬は6〜12か月ごと、シニア犬は少なくとも6か月ごとですが、犬種、持病、薬、過去の検査結果に合わせて主治医と決めます。
混合ワクチンを打てば狂犬病予防注射は不要ですか?
不要にはなりません。混合ワクチンと狂犬病予防注射は対象となる病気と制度が異なります。日本では年1回の狂犬病予防注射などが法律上の義務です。混合ワクチンの種類・間隔は生活環境と健康状態で個別に考え、狂犬病予防注射の体調上の扱いや自治体手続きは獣医師・自治体へ確認してください。
犬に人用の薬を使ってもよいですか?
自己判断では使わないでください。人には一般的な鎮痛薬、かぜ薬、胃腸薬、塗り薬、目薬などでも、犬では中毒や臓器障害を起こしたり、診断を難しくしたりすることがあります。以前ほかの犬に処方された薬、残薬、サプリも同様です。誤って飲んだ可能性がある場合は、商品名・成分・量・時刻・犬の体重を伝え、すぐ動物病院へ連絡します。
老犬の下痢は何日まで様子を見られますか?
日数だけでは決められません。反復する嘔吐、水を飲めない、ぐったり、強い腹痛、腹部膨満、黒い便・多量の血、呼吸異常、誤食の可能性があれば今すぐ連絡します。緊急サインがなくても老犬で下痢が続いているなら、年齢のせいにせず当日中を目安に相談してください。詳しくは老犬の下痢が続くときの受診目安で整理しています。
まとめ|犬の病気は病名の暗記より受診の優先度と普段との差が大切
犬の病気は、皮膚・耳・目・歯、呼吸器、心臓、消化器、肝胆膵、腎臓・尿路、内分泌、骨・関節、脳・神経、生殖器、感染症・寄生虫、腫瘍など多くの領域に分かれます。日本の保険加入犬では消化器、皮膚、耳の請求が幅広い年齢で見られ、加齢とともに循環器、肝胆膵、泌尿器、内分泌、腫瘍なども確認したい領域になります。ただし、保険請求割合は一般犬の発症率ではなく、個々の犬の診断にも使えません。
呼吸困難、意識低下、続くけいれん、止まらない出血、尿が出ない、腹部膨満と空吐き、中毒・熱中症・大きな外傷の疑いは、病名を検索し続けず直ちに動物病院へ連絡してください。軽く見える変化でも、続く、繰り返す、食事・水・尿・便・呼吸・動き・体重が普段と違う場合は早めに相談します。
家庭では、食事、水と尿、便と嘔吐、呼吸と咳、動きと行動、皮膚・耳・目・口・体重を同じ基準で観察します。定期健診、生活に合うワクチン・寄生虫対策、口腔ケア、適正体重、安全な住環境を整え、「元気だから大丈夫」「年だから仕方ない」「この犬種だからこの病気」と決めつけないことが、早い相談につながります。
